こんにちは!アシスト・ジャパン株式会社 東京営業部 手配課です!
あなたは初めての調理実習で作った料理を覚えているだろうか。私は覚えていないが、しかし、最後に作った料理は覚えている。
スープカレー。いや、カレーライスだ。
聞くところによると、小学生の調理実習は主に3つの調理方法を身に着ける目的がある。
茹でる。炊く。炒める。
なるほど。ともすれば、カレーライスはこの3つの工程全てを必要とする、家庭科調理学習の集大成として、これ以上ない適役である。
しかも、カレーライスは失敗しない。味付けはカレールゥで完結するし、お米なんて水さえしっかり計れば、あとは炊飯器に任せるだけ。具材はしっかり炒めるから生煮えによる食中毒リスクも回避しやすい。
どんなに不器用な子供でも、調理実習は4~5人の班単位で行うから他の班員と協力さえできれば少なくとも1人美味しくないカレーライスを口にすることもない。
わかりやすく、簡単に手に入る成功体験。この観点からも、カレーライスは調理実習の集大成としてこの上ない適役なのだ。
しかし、私たちが小学校6年生の2学期に作り上げたカレーはスープカレーだった。
同じ班の男子に言わせれば、“シャバシャバなカレー”だった。
特有のトロみがないことに始まり、味が薄い。誰かが水の分量を間違えた。一瞬出来上がったカレールゥを見て、一番やかましい子がカレールゥ担当の女の子を睨んだが、彼女もすぐに毒気を抜かれてしまった。
彼女が水を計ったお米が異常に、お粥のごとく柔らかかったのだ。今更炊き直す時間もない時点での発覚。
かくして、何とも言えない空気が私の班に流れた。水分過多なカレーと水分過多のお米。よもや、このまま犯人を糾弾する最悪な時間が訪れるかと身構えていたその時、見回っていた担任が物知りな──あるいは物知りを装った──声音で呟いた。
「スープカレーとお粥ね。健康に良さそう」
スープカレー? お粥は知っている。風邪や腹痛の時に食べさせられるやつだ。しかし、スープカレーとはなんだ。当時はまだ地元にスープカレーなどやって来ていなかった。スープもカレーも知っているから、なんとなくどんな食べ物か想像はできた。
当時、私たちも子どもだった。先生の言葉に機嫌を直した。恐らく、未知の食べ物を知らず知らずのうちに作り上げたという功績が大きかったのだろう。男子なんかは隣の班に「スープカレーを作ったんだぜ」と自慢していた。
すっかり自尊心を満たされた私たちはスープカレーなるものを口にし、唸った。
美味しくなかった。
当然である。どんな名前をつけられようが水分過多なカレーは“シャバシャバなカレー”でしかない。しかし、当時の私は子どもだった。それをスープカレーだと思い込み、食し、ただ味の薄くて美味しくない料理だと自ら記憶にすり込んだ。
さて先日、北海道に住んでいる友人を頼って札幌へ旅行に出た。
様々な美味しいものを紹介されていくうちに、久しぶりにスープカレーと出会う。
連れていかれたスープカレー屋で実に10数年ぶりの再会。味気の薄い記憶が蘇る。
出てきたスープカレーは調理実習で見た姿とは似ても似つかない、大ぶりな具材に香り豊かなスパイス。私たちの“スープカレー”が小ぶりなアクセサリーでジャラジャラ着飾るがしかし色気もへったくれもない田舎の小ヤンキーだとすれば。対する本場のスープカレーはアクセサリーなんて必要ない。ドレッドヘアを嫌味ともしないボブ・マーリーのごとく色気。
肝心の味は言わずもがな最高だった。これだったら億単位で食べられる──と言えば大げさだが、スープ特有のサラサラ加減のおかげでついついスプーンが進む。食欲を刺激するスパイスのおかげもあったかもしれないが、とにかく美味しかった。
小学校のときに偶然出会った“スープカレー”の思い出など、すぐさま更新されて、今では私の好物の1つだ。
つい、熱く語り過ぎてしまったがこの衝撃を語りたくて、今回のブログ当番は楽しみにしていた。
お蔵入りにならなくて、本当に良かった。アクセス数もロッククライミング。億単位になればなお嬉しい。