全く持って個人的な事ではありますが、「南の島」に子供の時分から憧れておりまして、
「大人になったら南の島で暮らしたいなあ」と夢想しておりました。
ところが現実は厳しく、蒸し暑い日本にまだまだ居続ける様相を呈しております。
まあ、しかし、何年かに一度グアムへは行ける身分になり(格安チケットは偉い!!)、
波間に打ち上げられたトドの如く、あまり人様には見せられない身体で南国を堪能するようになりました。
そんなある年、仲良くなりました現地のJさんが言いました。
「おまえヒマならイイところツレテッテやる」
悲しいかな独身男性、「イイところ」の妄想がパンパンに膨らみましたが着いたのはジャングルの中。
私が異を唱える前に、「ここナンテ書いてあるかワカルカ?」と。
なんだか岩の塊を指差して言うのです。
イエスとノーとオーケーしか話せない私は「読めるか!」と思いましたが、意外にも読めました。
「高木隊 第二分隊 13名」と。
途端に空気が変わるのが感じました。そう、ここは中部太平洋の絶対国防圏としての軍司令部の跡でした。
よくよく周りを観察すれば他にも日本語が至る所に書き連ねてあり、その様相がありありと感じ取れます。
「オマエ、コレ見てどうオモウ?」、Jさんが聞いて来ます。
正直、何も出ませんでした。「可哀想」「大変だった」「お疲れ様でした」「申し訳ない」、何一つ出ません。
とてつもないリアルでありながら、どこか夢の中みたいな非現実感が纏わり付いていたのです。
南国の強い日差しがさらに強く感じ、ただ、風がそよぎ静かに木々が揺れるだけでした。
老人達が多くを語らず、ただ消え去るのみを貫くのは、その非現実感のせいなのかも知れません。
「目の前の事が受け入れられなかった」とも私の祖父は語りました。
奇しくもまたグアムが戦争の標的になろうかという状況です。
皆が「まさか」と思い、「ひょっとしたら」とも思う。そのリアリティの無さに現実が容赦なく襲い掛かる。
まあ、願わくばまたこの南国にビールを飲みに来れればと思います。(社長!よろしくお願いします!!)
ああ、そういえば、Jさんも祖父も同じ事を私に言っていましたね。
「ナンデ、戦争なんかしたのかネ…」
私は答えを持っていませんでした。いつか、祖父にもJさんにも答えられるでしょうか?
さて、重苦しい話は置いといて、新社屋への引越しの風景をお届けします。
社員だけで引越しを行いまして、私はすっかり腰をヤラレマシタ。
そんな中、若い連中は余裕ですね。…フン、だ。